【第十話】つながる想い

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 出発してから数時間後――二人は両親がいる生家へと帰省した。  毎年のことなのでこれといった特別なことはないが、兄妹が同時に帰ると、両親はとても嬉しそうな表情を見せた。  懐かしい我が家はやっぱり居心地が良い。  ただ、この一年の間に真琴は火事という災難に遭っており、両親はそれについて心配していたようで、色々と質問攻めに合った。  その後は地元の出来事や周りの人々の話に花が咲き、家族団欒の時間は過ぎてゆく。  ひと段落して居間でテレビを見ていると、家の固定電話が鳴った。  母がその電話を取ると、他所(よそ)行きの甲高い声が次第に変わり、心配や焦りが混じっているような大きな声をあげた。  家族みんなの視線が母の方に集まっていた。電話が終わるとすかさず父が声をかける。 「おい、どうかしたのか……?」 「優子(ゆうこ)ちゃんの娘さん、千花(ちか)ちゃんがまだ帰ってないんだって……!」 「迷子……!?」  時計の針は夕方の六時を指していた。  優子ちゃんというのは、この地元出身の女性で、年齢は真琴より十歳ほど上だ。  彼女も毎年帰省しており、数年前からは娘の千花も一緒に帰省するようになったのを、真琴も健太郎も知っていた。  千花はおそらく小学生にはまだなっていないくらいの年齢だったと思う。  八月ということもあってまだ外は暗くなってはいないが、早くしないと日が沈んでしまう。ここは東京と違って灯りが少なく、日が沈むと真っ暗闇になる。
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