【第十話】つながる想い

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 奏の家のリビングに三人の男女が集っている。  奏、真琴、健太郎。  真琴と健太郎は改まったような表情でいるのに対し、奏だけは余裕そうな表情を浮かべている。  そこで最初に口を開いたのは健太郎だった。 「で、二人は……付き合ってんの?」 「……」  真琴と奏は返事をしない。  真琴は俯いていて、誰とも目を合わせようとしない。  奏はそんな真琴の表情を一瞥した後、健太郎の目を見る。 「そうなんだ。でも僕が周囲には黙ってるようにお願いしてた。吃驚させてごめん」  黙っている真琴の代わりに奏が応えた。  その言葉を聞いて、真琴と健太郎は驚きの表情で奏を見る。 「悪いんだけど、健太郎もこの事は誰にも口外しないでもらえるかな。諸事情があって」 「お前……真琴のこと、好きだったのか?」 「世界で一番好きだよ」 「……」  勝手に進んでいく会話におろおろとしながら、真琴は二人の表情を交互に見ていた。  健太郎の表情はいつにもなく真剣で、その空気の重さに冷や汗が溢れ出てきた。 「……」 「……」 「……なーーーんだ! そうだったのかよ! もっと早く言ってくれれば良かったのに! あ、言えない事情があったんだっけか。あはは!」  気の抜けた声で健太郎は笑った。  さっきまでの深刻そうな面持ちは見る影もない。 「真琴良かったかなぁ! 恋が実って!」 「えっ!? は!? ちょっと、ちが……」 「奏には真琴なんか勿体なさすぎるけど……兄としては嬉しいよ! 本当にワガママで素直じゃない奴だけど、これからもよろしく頼むよ」 「ありがとう、健太郎」  和やかな雰囲気で、二人は話を進めていく。  納得した健太郎は笑顔で、先程言いそびれていたという要件を奏に伝えると、ご機嫌そうにまた帰って行った。  嵐が去ったような静けさがリビングに残り、真琴と奏はしばらく無言が続いた。 「ねえ、私たち付き合ってなんか……」 「あんな所見られちゃったんだから、しょうがないよ。寧ろ、好きでもない、付き合ってもない、なのに一緒に暮らしていてキスだけしている関係ですって話す方が、真琴にとっても良くないでしょ?」 「そ、それはそうだけど……」  確かに事実だけを言葉に並べるとひどくだらしない関係だ。  それを肉親に知られるなんて、恥ずかしさに耐えられない。 「それよりもさ、さっき健太郎が言ってた『恋が実った』って何?」  奏は意地悪そうな笑顔を浮かべて真琴に近づいた。
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