【第十一話】どうしても欲しい

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 菜知と約束していた待ち合わせ場所に少し早めに到着した。  するとそこには一際目立つ美人がいて、すぐに菜知だとわかった。 「一条さん、お待たせしました!」 「やあ。気にすることないよ、まだ五分前だ」  それから二人はすぐ近くのカフェレストランに入る。  若い女性客が大勢いて、店内はとても賑やかだ。  ここだと多少恥ずかしい話をしたとしても、周囲に聞かれるようなことはないだろう。 「まずはおめでとう。真琴と初めて会った日から、いつかこんな日が来るのを楽しみにしてたよ」 「そ、そうなんですか……? あと、奏は一条さんにどんな風に報告してたんですか?」 「聞いたのはつい先日なんだ。会社でたまたま会った時にいきなりスマホの待ち受けを見せられてね。何かと思ったら、待ち受け画像が変わってた。」 「スマホ……?」 「まあ、それを見て恋が叶ったっていうことを察したのさ」 「……? ちなみに、変わってた待ち受けって何なんですか?」 「猫だったよ、白色の長毛種」 「猫…?」 「『真琴が可愛いって言ってたからいつか飼いたい』って」 「……あ!」  同棲を始めた当初に二人で猫カフェに行ったことを思い出した。  その時、特に真琴が可愛がっていた子が、白い長毛種の子猫だった気がする。  そんなことまで覚えていたのかと照れくさくなる。 「で? 何か今日は聞いてほしいことがあるんだって?」 「はい、実は……」  真琴は今まで隠していた部分の関係も合わせて、菜知に正直に話した。  そしてそれ以上の進展がなくモヤモヤしていること、自分に魅力がないのかと不安なこと、奏が何を考えているのかわからないということも話した。 「初耳の情報が多くて、さすがに私も吃驚してるよ」 「すみません……」 「奏の考えてることなんて、私もわからないけど、仮説は立てられる」 「仮説?」 「一、意外と奥手。ニ、真琴をとても大切にしている。三、焦らすのを楽しんでいる」 「一は違うだろうけど……、三はありそうで怖いですね。二はまぁ、大切にされているのはわかるんですが、それが理由で手を出してこないのかはちょっと……」 「どうして一は違うと思う?」 「だってアイツがたくさんモテてきたのを今まで見てます。一緒に暮らしてても妙に女性慣れしてるというか手際が良いというか……。女性経験は豊富そうだから、それだけはないかなって」 「へえ……」  菜知はにやりと含み笑いをした。  どうしてそんな顔をしたのか真琴にはわからない。こういった仕草が、奏とよく似ていると思う。
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