【第十一話】どうしても欲しい

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 ドリンクを受け取り、テーブル席へと三人は腰掛けた。  なんだかんだ真琴も付き合うことになってしまった。  特に会話が弾むことはなかったし、晶と棗の初タピオカの反応は相変わらず感情の起伏が感じられなかった。  真琴はタピオカと共にシュールな空気感を味わっていた。  目的を達成できた二人からは丁寧なお礼を言われ、ドリンクを飲み終えると、二人はまた人混みの中へと歩いて行った。  ようやく平穏が訪れ、ふぅ、と一息つく。  時計を確認すると、もう奏が夕飯の支度を始めるような時間だった。  急いで帰ろうと思って大通りの方へ向かう。  そして空車のタクシーを見つけ、手を上げようしたと同時に、そばにいた男性も手を上げた。 「「あ!!」」  そしてその顔を見て驚く。  柚木 恭平だった。いつかの痴漢騒動ぶりの、真琴の元彼。 「俺が先だったからな!」 「言われなくてもわかってるわよ!」  口喧嘩が始まりそうになった時、二人が狙っていたタクシーは、さらに前の別の人の所で止まり、賃走という表示に切り替わってしまう。 「ああ!! クソッ!!」 「あーあ、可哀想に」 「うるせえ! お前は本当に性格ブスだな!」  今日は人とよく会うが、よりにもよって恭平とも出会うなんて。  コイツと喧嘩しても良いことなんて一つもないのだから、時間を使うのが勿体ない。  しかし、まだ当初の目的のモヤモヤが発散されていなかった真琴は、参考がてらに恭平に質問をぶつけてみることにした。 「私って、そんなに魅力ない?」 「は?」 「女として、魅力ないかって聞いてんの」 「突然何言い出して……」 「恭平はどんな女の子だったら、抱きたくなる?」  あまりにもドストレートな質問に、恭平は顔を赤くしてたじろんだ。  真琴と恭平は学生時代に付き合っていたが、数回キスした程度で、肉体関係はなかった。 「は、お前、何を……」 「良いから教えてよ。参考にするから」 「参考ってなんの……」 「もし私が恭平の彼女で、どんな風にしてたら、魅力的に見えると思う? どんな時にムラムラする?」 「勘弁してくれ……」  ずいずいと近づいて見上げる真琴の強い眼差しに押されて、恭平は後退りした。
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