【番外編】青春に消えた恋

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「なあ恭平。お前誰に投票する?」 「は? 何が?」  部活のために更衣室で着替えていると、同じバスケ部の仲間が急に話題を振ってきた。 「女子の人気投票」 「あぁー……。別にこの学校、可愛い子いなくね?」 「うっわ、みんな泣くぞ」 「こんな投票やってるって知った方が泣くだろ」 「おいおい、良い子ぶんなって」 「まあそーだなー……。委員長に投票してやっかな。ゼロ票だったら可哀想だし!」  意地悪そうなニヤケ顔で答えると、もう一人の仲間が会話に混ざった。 「お前んとこの委員長って本田さんだろ? あれ意外と人気あるぞ」 「え、マジ?」  会話に割り込んできたのは他のクラスの奴だった。  本田 真琴は自分のクラスでは全く話題に上がらないけれども、他クラスでは意外と注目があるらしかったことに驚く。  真琴の魅力を見抜いていたのは自分だけじゃなかったのかということに少し落胆した。  その日の帰り、いつも通り自転車を飛ばしていると、真琴の後ろ姿を捉えた。  いつの間にか後ろ姿だけで本人を確信できるほど見慣れてしまっていた。 「真琴」 「……恭平」 「今日は遅いの?」 「うん、ちょっと寄り道してたから」 「送ってやるから、乗れよ」 「でも……」 「良いから乗れって、お前以外にこの道で帰ってんの見たことねーし、誰にも見られねーから」 「じゃあ……ありがと」  半ば強引に真琴を自転車の後ろに乗せた。  自転車はただの口実で、もう少し彼女と話してみたかったし、近くに寄ってみたかった。 「掴まってていいから」  すると彼女は素直に恭平の腰にその手を回した。  自分で言ったものの、温かい体が触れると心臓が飛び跳ねそうなくらい緊張した。  女子と関わることなんて日常茶飯事の恭平だが、何故だか真琴は他の女子の時とは違う。  自転車のスピードをゆるめにして、風の中を走っていると、自分のすぐ後ろから真琴の声がした。
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