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「真琴、そろそろお昼だよ」
奏の声で視界が開く。
一度起きた後、いつのまにか真琴も二度寝をしてしまったようだった。
奏はすでに着替えを済ましており、真琴一人だけが全裸で布団の中に寝転がっていた。
急いで真琴も着替えて顔を洗い、起床の準備を整えた。
ダイニングに二人が揃うと、真琴の方から昨夜の話を持ち出した。
「昨日、そのまま寝ちゃったけど……きもちよかったよ」
「うん、僕もだよ」
「あんなに上手なのに、なんで今までシてくれなかったの」
「初めてだったから」
「へ?」
「昨日が初めてだったから、どのタイミングが正しいのかわからなかったんだ。あと、怒らないで聞いて欲しいんだけど……元々そういう欲が薄くて、しなくても平気だったんだ」
奏は昨日が初体験だった?
ということは、今まで二十六年間生きてきて、ずっと童貞だったということ?
あんなにモテていたのに、本当に真琴一筋だった?
初めてにしてはあまりにも手際が良かったし、的確にツボをついてきたのは?
何でもできる完璧超人は初体験も卒なくこなすのか?
あらゆる疑問が脳内を埋め尽くす。
真琴が呆然と奏のことを見ていると、奏は若干頬を赤らめた。
「変なことしてなかった……?」
可愛い。
真琴の母性本能が刺激され、庇護欲が急激に上昇した。
さすがに何も返事をしないと奏が可哀想なので、真琴も口を開いた。
「今までで経験した中で、一番幸せだった」
その言葉に奏は安心したようで、表情はいつも通りに戻り、
「じゃあ次は一番気持ちよかったって言ってくれるように頑張るね」
と、にっこり微笑みながら言った。
その声色と表情に真琴はドキリと嫌な予感がした。
初めてで余裕がなくてアレなのであれば、今後はどうなってしまうのだろう。
奏が真琴の性感帯を学習していくと考えたら少し怖くなった。
永遠と攻めあげられて余裕がなくなる姿が想像ついてしまって、体がひんやりとした。
恐ろしくなった真琴は早々にこの話を切り上げて、平静を装うので精一杯だった。
【第十二話 終わり】
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