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「ちょっと、熱があるの!? 大丈夫!? ていうかここは駄目だって! もうちょっとだから、部屋まで歩ける?」
真琴ひとりでは奏の体を運ぶことはできない。
体をゆっくり起こしてあげると、奏は弱々しげに頷いた。
横について体を支えてやりながら、数分かけて奏の寝室に到着した。
ようやく思い切り寝転んでも構わない場所に辿り着けて真琴は安心した。
奏の体温を測ると三十八九度近くまで上がっていた。
「病院行く……?」
真琴が尋ねると、奏は顔を横に振った。
「たぶん、ただの風邪だから……。寝てたら治ると思うんだ」
「そう……。まずは寝て。動けそうになったら、着替えてね」
そう言って枕元に着替えを置いた。
熱があるだけで、咳の症状はなさそうだ。
声は少し鼻声になっている気がする。
「薬とかスポドリ買ってくる。他になにか欲しいものある?」
「大丈夫」
「薬飲むのにお粥とかなら食べれる?」
「今は無理そう……」
「じゃあいつでも食べれるゼリーとかも買ってくるね。ちゃんと寝ててよ」
そう言って真琴は家を飛び出した。
奏が体調を崩しているところを初めて見た。
体力に自信があるようなタイプでもないし、人間なんだからそんな日があっても当たり前だと思う。
しかし、今まで奏に対して受け身だったため、奏が体調を崩している時は向こうが会いに来なかっただけで、わざわざ自分から会いに行ったりしたことはなかったから、その姿を見たことないだけだと悟る。
やっぱり奏のことを全然知らない自分が少し嫌になる。
近所のドラッグストアで薬、冷えピタ、スポーツドリンク、ゼリー、レトルトのお粥など、とにかく使えそうなものをまとめて買い込んだ。
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