【第十三話】病めるときも

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 家に戻ると、奏はぐっすりと眠っていた。  きちんと着替えも済ませていたようで、寝巻きの代わりにスーツがそこに置かれていた。  それを真琴はクローゼットに戻しておく。  起こしたら悪いと思ってその部屋を去ろうとすると、ベッドの中から掠れた声が届いた。 「真琴……」 「ん?」 「そばにいてほしい」 「ダメよ。私まで風邪がうつったら、二人の介抱は誰もしてくれないのよ」 「それはそれで、ずっと一緒にいられるから良いけど」 「バカなこと言ってないで早く寝る!」  奏は真琴の言葉を聞くとふにゃりと笑った。  こんなに弱々しく甘える奏は珍しいから、もっと眺めていたい気もするけど、自分も崩れるわけにはいかない。  真琴は自分の心を律するように表情を引き締めた。 「買いだめしたからしばらく家の中から出る必要はないと思うから。すぐ近くにいるし、何かあったらすぐに呼んで」  奏にかかっている布団を綺麗に正して、奏の頬にキスをした。 「これで我慢してね」  奏は頷き、ゆっくりと目を閉じた。  その様子を見て、真琴は奏の部屋を去る。  自分の部屋から布団を持ってきて、リビングに移した。  リビングと奏の部屋は隣り合っているので、小さな声でもすぐに拾えるように、今日はリビングで一夜を明かすと決めた。
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