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それから真琴も仮眠を取ってしまったようで、時計を見るとあれから二時間ほどが経っていた。
一度薬を飲んだ方がいいのではないかと思い、ゼリーと薬を用意して奏の部屋に入る。
奏は深く眠っているようだった。
真琴は思わず奏の寝顔に見惚れてしまう。
何度見ても見慣れないし、美しい顔だと思う。
ぼうっと見ていると、枕元に放り出された奏のスマホが光った。
新規メッセージが届いた通知だった。
『瀬戸さん大丈夫ですか? 良かったら看病にいきますよ』
その通知の下にはさらに前に受信したメッセージ通知も重なっていた。
『瀬戸先輩お大事になさってください』
『欲しいものがあれば届けに行きますよ!』
『瀬戸先輩が心配です……』
すべて違う人たちからのメッセージで、見たことがない名前ばかりだ。
すべて女性の名前だった。
おそらく奏の会社の人たちで、奏の体調が悪いことを知ってここぞとばかりにアピールをしてきているのだろう。
特に、家にまで来ようとしているものには腹が立った。
普段何も言ってこないけど、やっぱりモテているんだなということを実感して、ヤキモチを妬いてしまう。
そのメッセージ群を見た途端、急に奏を独り占めしたくなってしまって、ベッドの片隅に座り込む。
奏の寝顔を誰よりも近くで、長く占領する。
数分間居座っていると、奏の瞼が微かに動き、ゆっくり目を開いた。
目の前に真琴がいることに少々驚いた表情を見せた。
「そこにいたんだ?」
「やっぱり今日はずっとここにいる」
「風邪がうつるよ?」
「良いの」
ぶっきらぼうに応える真琴に対し、奏は微笑みかける。
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