【第十三話】病めるときも

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 それから真琴も仮眠を取ってしまったようで、時計を見るとあれから二時間ほどが経っていた。  一度薬を飲んだ方がいいのではないかと思い、ゼリーと薬を用意して奏の部屋に入る。  奏は深く眠っているようだった。  真琴は思わず奏の寝顔に見惚れてしまう。  何度見ても見慣れないし、美しい顔だと思う。  ぼうっと見ていると、枕元に放り出された奏のスマホが光った。  新規メッセージが届いた通知だった。 『瀬戸さん大丈夫ですか? 良かったら看病にいきますよ』  その通知の下にはさらに前に受信したメッセージ通知も重なっていた。 『瀬戸先輩お大事になさってください』 『欲しいものがあれば届けに行きますよ!』 『瀬戸先輩が心配です……』  すべて違う人たちからのメッセージで、見たことがない名前ばかりだ。  すべて女性の名前だった。  おそらく奏の会社の人たちで、奏の体調が悪いことを知ってここぞとばかりにアピールをしてきているのだろう。  特に、家にまで来ようとしているものには腹が立った。  普段何も言ってこないけど、やっぱりモテているんだなということを実感して、ヤキモチを妬いてしまう。  そのメッセージ群を見た途端、急に奏を独り占めしたくなってしまって、ベッドの片隅に座り込む。  奏の寝顔を誰よりも近くで、長く占領する。  数分間居座っていると、奏の瞼が微かに動き、ゆっくり目を開いた。  目の前に真琴がいることに少々驚いた表情を見せた。 「そこにいたんだ?」 「やっぱり今日はずっとここにいる」 「風邪がうつるよ?」 「良いの」  ぶっきらぼうに応える真琴に対し、奏は微笑みかける。
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