【第十三話】病めるときも

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「じゃあ一緒に寝て欲しい」 「良いけど、その前に薬飲んで。ほら、ここにあるから」 「わかった」  奏は大人しくゼリーと薬を同時に含み、また横になった。  真琴ももぞもぞと布団の中に潜り込む。 「僕は真琴と一緒にいるのが一番健康に良いから」 「奏……」 「真琴が名前を呼んでくれる度に、自分はこの世界にいて良いんだと再確認できる」 「大袈裟すぎる……」  体が弱ると心も弱るとはよく聞く。  奏もそうなのだろうか。  いつもより自信がないような気がする。 「真琴が目の前からいなくなることが一番怖い。耐えられない」  奏は横にいる真琴の頬にそっと手を重ねた。  その手の体温は高く、まだ熱が下がりきっていないことを感じ取る。  そんな心配は必要ないのに、と真琴は心の中で呟く。  それをあえて言葉にはせず、そのまま顔を近づけ、二人はキスをした。  真琴の方から舌を差し出すと、奏も応えるように舌を絡ませる。  二人から溢れ出る水音を聞いていると、真琴の体まで熱があるように火照った感覚に陥る。  唇を離し、お互い荒くなった呼吸を整える。 「さっきまであんなに風邪がうつるって言ってたのに、どういう心境の変化?」 「うるさい!」  真っ赤になって憤慨する真琴を両腕で包み込み、ぴったりと引き寄せる。  抱き枕のようにその腕の中に収めると、 「これが一番幸せ」  と、奏は呟いた。  *  *  *
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