【第十四話】生まれたところ

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 襖の奥から晶の声がした。  奏は襖を開けて、中に入ると、部屋の中央に振袖姿の晶がいた。  制服以外の姿を初めて見たが、いつも以上に大人びて見える。 「晶ちゃん、こんにちは。お手紙ありがとう」 「真琴さん、この前はありがとうございました。お兄様もとても喜んでいました」 「それは良かった」 「今日は是非そのお礼がしたくて。あと、真琴さんともたくさんお話しがしたいです。奏も帰ってきてくれて嬉しい」  晶の言葉に奏は特に返答しなかった。  それからは晶は真琴に、自分の学校の話や家の中の話を語った。  晶曰く、家の中でも外でも自分の好きなものを話せる人がおらず、寂しさを感じているようだった。  奏はそれに対して何も口を挟まずただ聞いていた。  晶が一通り自分の話を終えると、今度は真琴に質問攻めをしてきた。  〝真琴さんは男性とお付き合いをされたことがありますか?〟や〝どのような男性が好みですか?〟など、恋愛に関する話ばかりだったので、横にいる奏の視線が痛かった。 「結局、お二人は恋人ということではないんですよね」 「恋人だよ」  口を挟んだのは奏だった。  一連の話題に痺れを切らしたのだろう。  その言葉を聞いて無表情に近かった晶の瞳が少しだけ見開いた。 「なるほど、理想とは違う方とお付き合いすることもあるんですね」 「あはは……」  真琴は思わず苦笑いをしてしまう。  この兄妹の空気感が未だに掴めない。  真琴は少し心を落ち着かせるために、ひとり席を立ち、お手洗いに向かった。
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