【第十四話】生まれたところ

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 部屋を出てさらに廊下を奥に進んで、右に曲がった所と案内され、その廊下を進んでいく。  奥に進んだところで、廊下が左右に分かれているところに到着した。  言われた通り右に曲がり、無事にお手洗いに辿り着く。  手洗い場の鏡で化粧直しをして気合いを入れ直す。  ――奏のことが知りたい、奏の家族とも良いお付き合いをしたい。  瀬戸家に圧倒されて縮こまっていた心が再び立ち上がったのを感じると、お手洗いを後にして再び晶の部屋に戻ろうとする。  廊下を進むと、先程の分かれ道の奥に、一人の女性が立っていた。  分かれ道の左側の廊下の方角だ。  女性は着崩れた留袖姿に、長い黒髪を雑にまとめているが、美しい人だった。  ぼうっと覇気のない表情で真琴を見つめている。 「あなたが晶と奏のお客様ですか」 「は、はい……」 「ご挨拶が遅れました。晶の母の加奈子です」 「! お、お邪魔しています! 私、本田真琴と申します。この度は……」 「もし良かったら、私の部屋で少し話しませんか」 「は、はい……」  真琴は部屋に戻ることを忘れて、言われたまま、憂いの表情を帯びた美人の後ろをついてゆく。  先程は進まなかった方角の廊下を奥へ進むと、晶の部屋同様に華やかな襖がそこに佇んでいた。  こちらには水仙の花が描かれている。  部屋に入るやいなや、加奈子は真琴を正面に座らせ、口を開いた。
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