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「真琴、かわいいね。世界一、かわいいよ」
奏はさらに距離を縮めてくる。
片方の手は真琴の手首をがっちりと握ったままで、空いている反対の手が伸びてきて、真琴の頬を優しく撫でた。
奏の視線は真琴の瞳をじっと見つめて離さない。
ソファに押し倒すようになったその体制は、真琴の体に奏の体がぴったりとくっつき、相手の体温と重量が微かに伝わる。
身動きひとつ取れないどころか、視線を逸らすことさえできない緊張感が走る。
――まさかこの完璧超人の弱点がお酒だったなんて! 奏は自制していたのに自分が煽ってしまったのだから何も言い訳ができない。
お互いの鼻先が触れるくらいに近づいた顔は、それでもなお瞳をじっと見つめたままだった。
「真琴だけを愛してる」
吐息がかかる。甘く、擦れた小さな声で愛を囁く。
この男はいつも恥ずかし気もなく甘い言葉をかけてくるので、真琴は慣れっこだったが、この状況での愛の告白には緊張と羞恥で頬が紅潮せざるを得なかった。
「……キスしてもいいかな」
頬に触れている奏の手の親指が、真琴の唇をゆっくり優しく撫でる。
真琴はパニック状態で思考が追い付かなくなり、何を思ったのか自分でもわからず、小さく頷いてしまった。
それは一種の反射行動だったのかもしれない。
肯定を確認すると、一層体重がのしかかり、唇には温かいものが触れていた。
そして数秒経ったのち、ゆっくりと唇は離れた。
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