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御堂はシャイな性格のため、朝の人だかりの中で声をかける勇気はなく、始業開始して真琴が一人になっているタイミングを見計らって声をかけることにした。
「本田さん、本田さん。ちょっと今いいかな……?」
「御堂くん、久しぶり。大丈夫だけど、どうかした?」
「あの……お家のことはとても残念だったね……しばらく仕事に来てなかったから、心配してたんだ。でも、無事そうで本当に良かった……」
「うん、ありがとう。新しい家が見つかるまではバタバタしそうだけど、なんとかなりそうだし大丈夫」
新しい家がまだないということは、実家か友人の家にでも避難しているのだろうか。
彼氏の家の可能性……については、火事騒動の直前に、真琴と他の社員の会話で「バレンタインにチョコを渡す相手はいない」という情報をゲットしていたので除外した。
今どうやって生活しているのかは凄く気になる所ではあったが、そこまで踏み込んだ質問をして良いものかわからなかったので胸の内にしまっておく。
「心配してくれてありがとうね。じゃあ……」
「あ、あ! 待って! あの、時田課長が一課と四課で飲み会でも開こうって……本田さんの復帰のお祝いにって」
「時田課長がぁ? どうせあの人、そんなのは建前で自分が飲みたいだけなんだから……」
真琴はじとりと睨むような目つきになり、断られそうな空気を察した御堂は咄嗟にフォローを出す。
「ぼ、僕も本田さんが来てくれると嬉しいな! ああいう場に同期がいると安心するから……! だから、あの、空いてるスケジュール教えてもらえるかな?」
真琴はもともと積極的に人付き合いする方ではないが、来るもの拒まずな性質があるため、なんだかんだ飲み会には参加してくれることになった。
無事断られずに済んで、御堂はほっと胸を撫で下ろす。
時田にもスケジュールを報告すると、その飲み会の幹事に任命された。
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