【番外編】御堂くんの受難

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 そして飲み会当日。合計十四人ほどが集まった飲み会が決行された。  名目上は真琴復帰のお祝いの会とされていたが、そんなものは関係なく、一同が自由に話し込んでいる普通の飲み会だった。  御堂は幹事の権限を駆使して、真琴の隣の席を確保し、心の内でガッツポーズを構える。  飲み会が始まって三十分もした頃だろうか、一同は酔いが回って、エンジンがかかってきていた。例に漏れず、真琴も酔っていた。  斜め向かいに座る時田と言い合いをしているが、これは険悪なものではなく、いつも見る漫才のようなやりとりで、周囲もそれを見てヤジを入れたり楽しんでいた。  時田は悪態をつくものの、なんだかんだ真琴のことは妹のように可愛がっているように思う。  御堂は平凡な男だが、ことお酒に関しては耐性が強く、全く酔うことはなく平常通りであった。  夜も深まり、そろそろお開きの時間ということで、会計を済まし一同はぞろぞろと店外へと出ていた。  どうやって帰ろうかと思案していると、背後からそっと近づいてきた時田が声をかける。 「おい、御堂。本田を家まで送ってやれ。タクシー代は俺が出してやるから」 「え、僕がですか!?」 「あの調子のアイツを一人で帰すのはダメだろ。それに俺はこんなガキの面倒みたくねぇ」 「は、はぁ…」 「幹事なんだから主賓の面倒はお前が見ろ。……間違っても襲うなよ。殴り殺されるぞ、アイツ獰猛だから」  時田はニタニタと嫌らしい笑みを向け、ピンと張った一万円札を御堂に手渡す。  御堂は耳まで真っ赤にした顔で、「そんなことしませんよ!」と早口で吐き捨てて、真琴の方へと駆け寄った。 「本田さん、大丈夫? 時田課長からタクシー代を頂いたから、これで帰ろう。途中までは僕が送るから……」 「ん〜〜……ありがとう……悪いんだけど、ちょっと気持ち悪いから肩貸して……」  真琴は意識自体は問題ないようだが、足元がおぼつかない様子だった。声にも覇気がない。  肩を貸してやる際にさりげなく香ったシャンプーの香りに、体が少し熱くなったのを感じたが、すぐに理性を取り戻す。
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