【第三話】この気持ちの名前

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「本田さん、ランチいきましょ♪  近くで美味しいお店用意してるから♪」 「わぁ、ありがとうございます! 楽しみです!」  昼の十二時を回った頃、真琴は職場の新チームの人たちとランチに出かけた。  第四課では自分をパシリに使う先輩は今のところいない。  優しい人が多く、意地が悪いのは時田くらいだ。  好物のパスタを食べながら、グループで会話をしていると、向かい合っていた先輩が声のボリュームを絞って、小声で話し出す。 「見て、あそこの人、超イケメンじゃない?」  真琴たちは店の奥側の席にいたが、先輩は入口近くの少し離れた席をじっと見ている。  真琴は入り口に対し背を向けていたので、先輩の言う方へ振り返ってみる、と同時に表情が凍り付いた。  何となく嫌な予感はしていたけど、先輩が指すイケメンとは随分見慣れたあの顔だった。 (何で奏がこの店にいるのよ! いい加減にしてよ!)  真琴はまた〝いつもの付きまとい〟だと思い、眉を吊り上げて奏を睨むが、向こうはこちらの視線には気づいていない様子だった。  そのまま見ていると、奏の向かいの空いた席に一人の女性が座った。  セミロングの艶のある髪が動くたびに揺れ、タイトなスーツをセクシーに着こなしている。そして女優のように美しい人だった。 「あー、彼女持ちかぁ。残念」 「それにしても彼女さんも超美人じゃない!?」 「ね、お似合いカップルだぁ。あの空間、(まぶ)しい~」  先輩たちが好き好きに話し出す。  奏と女性はコーヒーを飲んで談笑しあっていた。  その美しさは映画のワンシーンのような光景で、こちら一般人の視線など一切お構いなしといった様子だった。  奏が自分を追ってここに来たと考えていた真琴は、その見当違いを恥じると同時に、小さな胸の痛みを感じた気がした。
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