327人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
「本田さん、ランチいきましょ♪ 近くで美味しいお店用意してるから♪」
「わぁ、ありがとうございます! 楽しみです!」
昼の十二時を回った頃、真琴は職場の新チームの人たちとランチに出かけた。
第四課では自分をパシリに使う先輩は今のところいない。
優しい人が多く、意地が悪いのは時田くらいだ。
好物のパスタを食べながら、グループで会話をしていると、向かい合っていた先輩が声のボリュームを絞って、小声で話し出す。
「見て、あそこの人、超イケメンじゃない?」
真琴たちは店の奥側の席にいたが、先輩は入口近くの少し離れた席をじっと見ている。
真琴は入り口に対し背を向けていたので、先輩の言う方へ振り返ってみる、と同時に表情が凍り付いた。
何となく嫌な予感はしていたけど、先輩が指すイケメンとは随分見慣れたあの顔だった。
(何で奏がこの店にいるのよ! いい加減にしてよ!)
真琴はまた〝いつもの付きまとい〟だと思い、眉を吊り上げて奏を睨むが、向こうはこちらの視線には気づいていない様子だった。
そのまま見ていると、奏の向かいの空いた席に一人の女性が座った。
セミロングの艶のある髪が動くたびに揺れ、タイトなスーツをセクシーに着こなしている。そして女優のように美しい人だった。
「あー、彼女持ちかぁ。残念」
「それにしても彼女さんも超美人じゃない!?」
「ね、お似合いカップルだぁ。あの空間、眩しい~」
先輩たちが好き好きに話し出す。
奏と女性はコーヒーを飲んで談笑しあっていた。
その美しさは映画のワンシーンのような光景で、こちら一般人の視線など一切お構いなしといった様子だった。
奏が自分を追ってここに来たと考えていた真琴は、その見当違いを恥じると同時に、小さな胸の痛みを感じた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!