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夕食時には奏が帰宅するも、今日のことは何も話してこない。
向こうから話さないならこちらから聞くわけにもいかないので、当たり障りのない会話だけでその日を終える。
次の日の日曜日はいつも通り二人一緒にいたものの、出掛けるわけでもなく、平凡な休日を享受した。
心の奥底の鉛は時間が経てばマシになるどころか、日に日に重さを増しているような気がする。
この日は数日ぶりに唇を重ねた。
失っていた数日の分を取り戻すかのように、奏はなかなか唇を離してくれず、いつもよりも長く激しく舌を絡めてくる。
激しく求められると何も考えられなくなってしまう。
しかし、どんなに求められてもなんだか切なさだけが一方的に積もるような気がしていた。
そしてまた、月曜日が始まる。
出社すると先輩が話を聞いて欲しそうに近づいてきた。
「ねえねえ聞いて~! 休みの日に買い物に行ってたら、あのランチ会の時に見かけたイケメンに遭遇したの! でもまたあの彼女さんと一緒でさぁ~。その日は二人とも私服だったんだけどやっぱモデルみたいなカップルで、超目立ってた!」
「へえ……」
真琴は予想が的中してたことを知り、朝から気を落とした。
確かにあの二人ならお似合いだ。
自分と比べて月とスッポンのような容姿の差がある。
あの二人の間に自信を持って割り込める人間など早々いないと思うほど、二人の容姿は整っている。
いつもと比べて覇気のない様子の真琴を見て、心配した御堂が声をかけてきた。
「本田さん? なにか悩み事?」
極々平凡な男がそこに立っていたので、咄嗟に本音が漏れてしまう。
「御堂くん見てるとなんか安心する……」
「え!?」
御堂は言葉の意味がわからず、慌てふためいた。
何かを勘違いしたのか、赤面までしている。
その様子がなんだかおもしろくって、真琴の顔には自然と笑顔が戻っていた。
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