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奏はそう言うと、腕を伸ばして真琴の体を抱き枕のようにホールドする。
そしてそのまま動きもしないし、何も話さなくなり、二度寝に突入しようとしていた。
真琴は緊張で眠気どころではなかった。
自分の体の全てを相手に委ねている状態で、いつどこを触られてもおかしくない距離なのである。鼓動は激しく脈打っていた。
しかし、しばらくすると奏はそのままの体制で本当に眠ってしまっていた。
この状況下で寝られてしまうというのは自分の女としての魅力度が低いのかと複雑な気持ちになる。
相手がそのまま動かないものだから、段々と慣れてきて気持ちも少し落ち着いてきた。
自然と頭の中に浮かび上がってきたのは、最近の自分の感情やら今日の菜知の言葉だった。
冷静になって素直な感情だけを汲み取ると、今こうして奏に必要とされていることは安心を覚えるし、どこか嬉しさもある。
背後から包まれるような温かさはとても心地が良いものだった。
――私が奏に恋をしている?
今はまだ結論は出ないが、抱き締める奏の腕、微かな奏のにおい、奏が温めた布団の温もりの全てが心地良く、今はそれを受け入れたいと素直に思ったのだった。
【第三話 終わり】
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