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「真琴は恋人同士なら一緒に暮らしても良いって言ってた。そのつもりでいるってこと?」
「……それについては……もうちょっと時間をちょうだい……」
「焦らすなんて意地悪なんだね」
「私だってこれでも前向きに検討してるのよ!」
初めて真琴の口から〝脈アリ〟であることを聞かされた奏は少し驚いた顔をする。
真琴の恥ずかしさが限界を突破したようで、やっぱり目を逸らしてしまっている。
その姿を見た奏はより一層真琴を引き寄せ、鼻先がついてしまいそうになるくらい、互いの顔を近づける。そしていつものように唇を――……
「ストーーーップ!!」
唇が触れる直前、真琴は奏との体の間に手を挟み、そのまま押し離すように距離を取る。
「……なに?」
「今後、奏との関係を円滑にするためにも話し合うことがたくさんある!」
「どういうこと?」
「まずは、お互いの意見が違った時は勝手な行動をせず話し合うこと! 次に、世間一般の常識に沿った行動をすること! それから……」
真琴は指を折りながら、いくつも注文を加える。奏はそんな真琴の様子を見て思わず笑みが溢れる。
「ねぇ、わかったから、後でゆっくり話し合おう。キスはダメっていうのはないよね?」
真琴はまだ話し終えていないのに、奏は待ちきれないといった様子で、顔を真琴の首筋に擦り寄せて、子猫のようにねだる。
真琴はくすぐったくて、思わず高い声が漏れた。
「ひゃっ! ちょっと、まだ……」
「もう待てない」
奏は首筋にそのまま唇を添わせ、撫でるようにゆっくりと動く。
奏の顔が真琴の首筋からそっと離れると、真正面に向き合い、真琴の弱点でもある潤んだ目でじいっと見つめた。
「終わったら、気が済むまで話し合いするんだからね!」
「勿論」
ぶっきらぼうな物言いをする真琴があまりにも可愛らしく映り、奏は微かに笑うと、そのままソファに押し倒し、あつい体を密着させた。
一週間ぶりに、唇を重ね、舌を交えて、お互いを貪り合った。
キスをする度、思考が定まらなくなり、昂る激情を抑えきれなくなる。
しかし、その興奮は以前とは変わりつつあった。それは背徳感ではなく、存分に愛されることへの多幸感と呼べる心地の良いものへと変貌していた。
その瞳、唇、腕、体温、存在全てを愛しいと体の奥深くが感じている。
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