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「うん、ありがとう。奏、悪いんだけど先に帰ってて」
「どうして?」
「こちら、会社の同期の御堂くん。ちょっとプレゼント選びを手伝うことになって」
「へえ……御堂さん、僕もご一緒しても?」
「え」
突然男は御堂の方に視線をやり、爽やかな笑顔を向けてきた。
にこやかだが、何故かとてつもない圧力を発している。
反論させる気などないといった様子だ。
「も、勿論です……人数が多い方が意見がたくさん出ますもんね……はは……」
圧に負けて御堂は空笑いで承諾してしまう。
真琴はあまり納得がいっていないようだったが、「御堂くんが良いなら……」としぶしぶ受け入れていた。
「僕は瀬戸 奏といいます。よろしくお願いします、御堂さん」
ああ、そういえばあの時に見た表札はそんな名前だったと記憶が揺さぶられた。
真琴が加わってくれたおかげで、御堂が当初目星をつけていた店内に入ることができた。
御堂の母はどういった人なのか、何が好きなのかなどを話しながら品定めしていく。
思いの外真琴と奏が真剣に御堂の話を聞いて、意見を出し合いながら品定めをしてくれる様子が嬉しかった。
しかし、奏は真琴の横にぴったりとくっ付いて離れず、御堂と真琴が二人きりになる時間など与えられない。
いくつかプレゼント候補がある中、最終的には真琴のアドバイスでガラス瓶入りのプリザーブドフラワーの置物に決まった。
桃色と黄色の優しい色合いの花は、置いているだけで華やかで豊かな気分になる。
きっと母も喜んでくれるだろう。
案外あっさりとプレゼント選びが終わってしまったため、その後三人はカフェでお茶することになり場所を移す。
カフェに入り席を確保すると、奏が三人分の注文を取ってくれるとのことで、席を外し、その場には真琴と御堂だけが残った。
やっと二人きりになれた御堂は、再び勇気を振り絞り、真琴に〝禁断の質問〟を投げかけてみる。
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