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「それじゃあね御堂くん。またお母さんの反応聞かせてね」
「あ、うん! 本田さん、今日は本当にありがとう……それと、瀬戸さんも、コーヒーご馳走様でした。それじゃあ、二人とも気をつけて」
別れの挨拶を済ますと真琴は先にタクシーに乗りこむ。
それを確認すると、奏はタクシーではなく、御堂に一歩近づき、耳元で囁く。
「チャンスがあるなんて考えないでくださいね」
ゾッとするほど甘く優しい声。
宣戦布告というよりかは注意勧告と受け取れるような一言を伝えると、奏はこちらの返事など聞かずに、そのままタクシーへ乗り込んだ。
車のドアが閉じるとそのまま発進し、十数秒後には御堂の視界の届かないところへ二人は姿を消してしまった。
「瀬戸さんって一体何者なんだろう……」
冷や汗が吹き出し、困惑の表情だけが残っていた。
一人残された御堂は、しばらくその場に立ち尽くしたまま、もう誰もいない道路を眺めているだけだった。
【終わり】
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