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朝食を終えると、真琴はクローゼットの中から今日の洋服を選ぶ。
どの服も今年買ったばかりの新品なので、お気に入りのものばかりだ。
色とりどりのコレクションの中から選んだのは白いワンピースで、襟や裾には上品なレース刺繍があるものだった。
居候二日目の時、奏と服を買い出しに行った際、彼がいくつか服の好みを口に出していたことがあった。
「真琴には白や淡い暖色が似合う」やら「女の子らしいシルエットのワンピースが好き」など、その時に言っていたことを思い出し、奏の好みであろう服を予想して選んでみた。
スッピンで着るには可愛すぎるワンピースだったので、出かける予定はないのにもかかわらず、丁寧にヘアメイクを施す。
自分の笑顔が見たいと言ってくれた奏に対し、今日一日は彼にとって一番可愛い自分でいたいと、健気に思っての行動だった。
着替え終えた真琴を見ると、奏はとても満足そうに近づいてきて、抱きしめたり、頭を撫でては「可愛い」を連呼してくるので、ほっと胸を撫で下ろしたのと同時に、内心嬉しくて堪らなかった。
しかし、奏はわがままらしいわがままは言わずに、豪華な朝食以外は普段通りの日常を送っていた。
わがままを言ってもらえない真琴は、何もすることがなく手持ち無沙汰になっていた。
ただ愛らしいマスコットとして存在することだけを求められているようで、それはそれで拍子抜けで、退屈に感じる。
奏が用意したこれまた豪勢な昼食を食べ終えると、真琴を横に侍らせたまま、奏はついに読書を始めてしまった。
奏は時々真琴の髪を指に絡ませて遊んだり、頭頂部を優しく撫でたり、まるで片手間に猫を可愛がるようにちょっかいをかけてくるが、本を読む手は止める様子はない。
(私、仕事まで休んだのに何で放置されてんの?)
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