【第八話】変わらぬ君がいた

1/11
前へ
/150ページ
次へ

【第八話】変わらぬ君がいた

 ある日の昼休憩。真琴は同期の女友達二人と一緒に昼食をしていた。  彼女達とは入社してすぐの頃、新入社員研修で親しくなったが、それぞれ業種の異なる部署へ配属されてしまったため、こうやって集まるのは数ヶ月に一回程度だ。 「何で私達彼氏いないんだろ。ねえ誰か合コンやる予定とか無いの?」  メイクから服装、小物にまで抜け目なく〝可愛い〟を演出しているその女――皆川(みながわ) くるみは、つまらなさそうに悪態をついた。  世間の流行は何でも知っているような今時女子だ。  男の前ではぶりっ子をする癖があるが、真琴達の前ではそんな様子は微塵もなく、不機嫌そうに目の前のサラダをぱくぱく頬張っている。 「そういやユウちゃんが来週やるって言ってたかも。聞いてみたら?」  もう一人の女――花宮(はなみや) (なぎ)がくるみの問いに答える。  凪は身長百七十センチを超えるモデル体型の女性。  細身の手足がすらりと伸び、小顔で、髪はポニーテールでひとまとめにしており清潔感がある。  スポーティで、ボーイッシュな雰囲気があり、男性よりも女性にモテるタイプだ。 「えぇ~。あの子と一緒は無理。真琴は……いや何もない。聞く必要もなかったわ」 「何よそれ」 「アンタ、合コンとか全く興味なさそうだし」 「まあね」 「はぁ~、もうすぐ彼氏いない歴一年になっちゃう」 「別に良いじゃん。私は彼氏できたことないからよくわかんないな。真琴は大学以降いないんだっけ? まあ彼氏なんかいなくたって楽しいことはいっぱいあるって」  凪はぐだぐだと文句を言うくるみを(なだ)める。その様子を眺めながら、真琴は黙々とパスタを食べている。  真琴はまだこの二人に奏の話をしていなかったが、相談くらいはしてみても良いかも……と口を開こうとしたら、くるみの言葉でその思考も吹き飛んだ。 「凪ちゃんはともかく、真琴は男見る目ないもんね」 「!」 「過去の男の話聞いてたら最悪なのばっかじゃん。暴言男、浮気男、借金男。ダメ男コンプリート」 「わ、私は別に……」 「真琴ちゃんはこんなに良い子なのにね~」 「良い子ってかお人好しなのよ。……そうだ、月末みんなでプールに行かない? 高収入、高学歴、高身長のイケメンが居たら逆ナンしちゃお♡」  くるみが放った条件に、見事当てはまる人物が身近に居たものだから、思わず真琴は()せ込んだ。そんなたわいもない話をしながら三人は時間が許す限り話し続けていた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加