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翌日の仕事帰り、真琴はまた同じ時間帯の電車に乗っていた。
仕事の雑務に追われて疲れ果てていたため、昨日のことなどすっかり忘れていたのだが、ふとまたお尻に添えられた手の感覚に気付き、一気に警戒心が蘇る。
その見知らぬ手が昨日と違ったのは、ゆっくり力が加わり、弾力のある肉に指が食い込んでいた。
ゆっくりと時間をかけて手の力は抜けてまた元に戻る、そしてまた力が入り指が食い込む。
そんな動作を執拗に繰り返している。
(これはさすがに偶然じゃないよね……!? 捕まえなきゃ……でも……)
真琴は初めて遭遇する体験に戸惑った。
体は硬直してしまい言うことをきかない。相手の顔を確認したくても、視線以外動かせそうにない。
迷っているうちに電車は次の駅に到着し、その瞬間に痴漢らしき手はパッと潔く離れた。
大勢の人達が降車するためにぞろぞろと動き出して、車内はより混雑する。
今振り返ったとしても、先程の手の主を見つけることはもう出来ないだろう。
一連の流れに戸惑っているうちに、呆気なく逃してしまったことに対し、後になってから沸々と怒りと後悔が押し寄せてくる。
(次に会ったら捕まえてやるんだから……!)
* * *
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