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【番外編】溶けあう熱
「ねぇ、パソコン貸してくれない?」
梅雨が明けてめっきり暑くなった七月下旬のある日、真琴は珍しいお願いを申し出た。
パソコンを触りたいというのは、真琴がこの家に来てから初めてのことだった。
「いいけど、何をするの?」
「ネットショップを見たいの。スマホでも出来るんだけど、もう少し大きい画面で色々見たくって」
「そう。準備するから、ここで待ってて」
奏はリビングにある棚の中からノートパソコンを取り出し、電源などのコードを繋ぎ出した。
真琴はその様子をソファに座ってただ見ており、セッティングされて起動したパソコンが目の前に置かれると、マウスを手に取り、インターネットを立ち上げた。
奏は横に座って、真琴が操作するパソコン画面を見ている。
「で、何を買うの?」
「水着」
「水着?」
奏はにっこりと圧のある笑顔をこちらに向けた。
その様子を見て、真琴は溜息をひとつ吐き、なにかを諦めたような表情をした。
「友達とプールに遊びに行くことになったの。女三人で。別にそれくらい良いでしょ」
奏の返事がない。
ちらりと彼の方を見ると、先程の笑顔から一転して、眉間に皺を寄せ不機嫌そうな顔をしている。
やっぱりね、と真琴は心の中で呟いた。しかし、そんな奏のことは無視して、ネットショップの閲覧を続ける。
カラフルで今年の流行を取り入れた最新の水着がたくさんラインナップされており、サムネイルで可愛いと感じた商品を片っ端から開いては吟味していく。
可愛い衣類を見比べている時間は何より楽しくて幸せな時間だった。
水着は下着と違って、周囲の人に見せるための物なのだから、少しくらい派手だったり大胆なくらいの方が良いと思う。
一年に何回も着れるものではないし、お気に入りの一品を探したい。
いくつか候補が絞られた中で、最終候補を何度か見比べていると、今まで黙っていた奏が横槍を入れてきた。
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