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数日後、真琴宛の荷物が到着し、注文した水着が届いた。
真琴はリビングで段ボールを開け、上機嫌そうに中身を確認する。
奏は楽しそうな真琴を黙って見ていたが、静かに横に座ると、顔を擦り寄せて耳元にキスを落とした。
「ひゃっ!? な、なに……?」
「ねえ、それ着せてみてよ」
「はあ!?」
「たくさん譲歩してるんだから、お願い」
「……」
「事前にサイズ確認してみても良いんじゃない」
「……そうね、わかった」
奏が言う通り、彼が真琴の自由意志を十分尊重しようとしてくれているのは真琴も薄々感じ取っていた。
以前とは違って、約束通りちゃんと歩み寄ろうとしてくれていることに嬉しく思う。
だからこそ、それくらいのお願いは聞いてやってもいいという気分になり、真琴は水着を持って自室へ移動した。
数分後、家の中には似つかわしくない水着姿の真琴が、照れ臭そうにリビングへ戻ってきた。
蛍光灯の下で白い肌を存分に晒し、元々のスタイルの良さが発揮されていた。じっとしているのが恥ずかしいのか、両腕を抱え込むようにして少し体をくねらせる様子を見せる。
「サイズは問題ないわね。見せたんだから、もう良いでしょ」
奏は真琴に近づき、その小さな体を抱き締めると、キスをして、そのままその唇を首筋に添わせ、耳元近くで囁いた。
「まだダメだよ」
「でも、こんな明るい所で私だけこんな格好、恥ずかしいから……」
「じゃあ暗い所に行こうか」
奏は姿勢を戻して、軽々と真琴を抱きかかえる。
真琴は突然のことに驚くも、宙に浮いた自分の体のバランスを取るために、思わず奏の首元に腕を回した。
真琴を抱きかかえた奏は、そのまま寝室へと移り、ベッドに辿り着くとその体を優しく下ろした。
寝室に灯りはついていない。
扉が開いたままなので、リビングからの灯りが漏れており、その光のおかげでうっすらと辺りが見える程度だ。
ぼんやりとした視界の中を見据えていると、ベッドが軋み、目の前に奏の気配を感じた。
覆いかぶさるようにゆっくりと押し倒されてゆき、唇、耳、首筋、胸元のあらゆる所に柔らかく温かいものが触れていった。
暗闇の中で自分を貪るケモノはただの一言も発さず、淡々と行為に耽り、真琴の甘い声だけが部屋に響いていた。
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