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上半身が露わになった奏は真琴を起き上がらせて、より一層強く真琴を抱きしめた。
対面座位の体制で抱き合う二人は着衣越しでしか感じたことのなかったお互いの体温に直に触れ、その熱を受け止める。
それと同時に、激しく脈打つ鼓動もすぐ側にあるのを実感した。
すでに何度も唇を重ねたのに、まだ飽き足らないどころか、より一層激しく口付けを交わす。
脳内は熱に浮かされ、目の前の唇を貪ることしかもう考えられない。
真琴の体はもっと乞うように相手の背に腕を回して、離れるつもりはないようだった。
どれくらい経ったのだろうか。
ケモノと化していた奏はようやく理性を取り戻したようで、体と顔をそっと離した。
「ごめん……」
今まで何度もキスをしてきたけれど、行為の後に彼が謝ってきたのは初めてだった。
いつも以上に強引だったことを自覚して後悔しているのだろうか。
真琴の方は蕩けたように頭がぼんやりとしていた。
「怒ってる?」
奏は眉を下げ捨てられた子猫のような瞳で尋ねてくる。
真琴は左右に小さく首を振った。
「さっきの約束はちゃんと守るから……信じて?」
真琴も上目遣いで奏の瞳をじっと見つめると、奏は大きく頷いた。
奏の表情は暗くてハッキリ見えなかったが、少しだけ微笑んで安堵の表情を見せてくれたような気がした。
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