モヤモヤBluesky (降りつもる)

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僕にはコンプレックスがある。 容姿も顔も、いわば普通の男子中学生だ。 良くはないが、格別に悪いというほどではないのだけど。 それよりも。 「お待たせすーちゃん。 ごめんね、遅くなっちゃった。 帰ろうか」 二卵性双生児の妹、真凛(まりん)が僕が今いる場所である図書室に来た。 彼女は僕と違い、スラッとした美人さんだ。 引っ込み思案な僕とは似ても似つかず、コミュ強で顔も広い。 影では我が中学校のマドンナとまで言われている。 夕陽が差し込む図書室には、もう僕たちしかいない。 僕は今日、図書委員の当番だったし、真凛は書道部の部活だ。 ちなみに彼女は、書道パフォーマンスで有名な高校を受験する予定らしい。 「今日は何の本を借りたの? パン? お菓子? こないだのケーキの本は当たりだったよね」 「ん、これ……」 僕が持っていたのは、可愛いキャラ弁の本だ。 真凜はそれを手に取って、パラパラとめくりながら言う。 「おぉ! 凄! こんなお弁当だったら、食べちゃうのがもったいなくない? ……ていうか、朝の時間でこんな凄いの作るのは厳しいでしょ」 「いや……こんな完璧には出来なくても。 ちょっとでもなにか、コツを掴めたらいいかなって。 それに、見てて楽しかったし」 暮れなずむ帰り道。 僕は可愛すぎる妹の横で、人知れずため息をつく。 僕の趣味は料理だとか裁縫だとか、俗に言う『女の子が好きそうなこと』だ。 しかし、それがコンプレックスな訳では無い。 そういう男子がいてもいいじゃないかと、僕はそう思っている。 それよりも。 「ふふ、すーちゃんのお弁当、毎日本当楽しみ。すーちゃんのそういうとこ、本当凄いよね」 すーちゃん。 僕の名前だ。 妹は真凛……彼女は顔と容姿が整っているからいい。 それに女の子だし。 僕は男の子で容姿は並だ。 最近ニキビも目立つようになってきたのに。 僕の名前は……青木(あおき) 澄海(すかい)。 ……最近、僕の名前が僕にあってなさすぎなことが、恥ずかしい! 大体、この名前は海なのか、空なのか? おまけに名字が青木なところがもう、なんとも言えない……たまらなく、恥ずかしいんだ……!!
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