モヤモヤBluesky (降りつもる)

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*** 僕と真凛の母親は、なんでも高校卒業と同時に結婚したそうだ。 しかもデキ婚。 『バイト先で知り合ったんだけどねー。 なんていうかお父さん!! って感じの人で。 ……今でも本当は大好きなのよ? でもまあたしかに、若気の至りではあったわーははは』 母は、かんらかんらと笑って昔を語る。 なんたって中学生の子供がいるが、その年齢はまだ三十三だ。 僕も真凛も、父親を知らない。 僕たちが一歳になった頃に、両親は離婚したからだ。 母の離婚の話になると、祖母は物凄く不機嫌になる。 昔に相当苦労したらしい。 『あそこの両親は本当にもう、思い出しただけでむかっ腹が立つよ……! まったくもって、縁が切れて良かった。 清々したよ』 母から一言、『あっちの親と同居だったのよねー』とだけ聞いている。 父の実家とは兼業農家で、祖父はなにやらの会社の結構重役だとかで。 早い話が、田舎のしがらみというか狭いドロドロとした環境は、母には馴染めなかったようだ。 そして、僕と真凛はほぼ祖母に育てられた。 母は仕事の都合らしいけれど、昼夜逆転しているような生活だった。 更に、この祖母もまたシングルマザーだったのだ。 僕にとって男の親族は、母のお姉さんの旦那さんくらいだ。 この女ばかりの世帯で男手が必要な時ぐらいにしか、顔を合わさなかった。 おまけに僕は極度の人見知りだから、男同志の会話なんてしたことがない。 加えて。 僕と真凜には現在小学四年生の妹がいる。 勿論父親は違うけれど。 名前は……海音(みんと)。 初見では人様からほぼ正しく読まれない。 頑張って『みのん』ぐらいだ。 海音本人は、名前の正解を当てるゲームみたいにして人とのコミュニケーションをはかっているらしい。 僕からすれば、なんとも逞しい……そしてそのコミュ強が羨ましい。 こら母さん! いくら母さんの名前が『七海(ななみ)』だからって、名前に海を折り込んで遊ぶのはやめてくれ……!
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