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そんな僕に、転機が訪れた。 僕が学校から帰ると、既に帰宅している海音が男の子を家に連れてきていたのだ。
「あ、お邪魔してます、お兄さん」
「やだもうダイちゃんってば。 私とダイちゃんが夫婦みたいじゃない」
かんらかんらと笑う海音に、男の子は照れているようだ。 その笑い方は、やはり母に似ていた。
見ればなにも出してなかったようなので、僕はすぐにその場から引っ込み、台所でココアをいれて戻ってきた。
「あー、ありがとすーちゃん! さっすが青木家のオカン役!」
まったく、まだ十歳のくせにお母さんのことをオカンとか言うな……というか、お客さんなら自分でもてなせ。
「……おやつとかも貰えると、すごーくありがたいかな。 えへへ、頼んでいーい?」
僕は妹の図々しいお願いにため息をついて、適当に見繕ってやることにした。 ポテトチップスとチョコチップクッキー。 袋に箱を丸ごと、お皿も渡すから、好きなだけとって食べてくれ。
持って行くと、ダイちゃんと言われた男の子のほうが先にお礼を言ってくれた。 そこで初めて、その子の顔をしっかりと見た。
「……?!」
「やっぱりすーちゃんも気がついた? でしょでしょ、ダイちゃんとすーちゃん、めちゃくちゃ似てるよね?」
僕と真凛が兄妹というよりも。 僕とダイちゃんといわれるその子のほうが、よほどに兄弟みたいだった。
「ダイちゃん、今学期からこっちの学校に引っ越してきたんだよー。 ちなみに隣のクラスなんだけど。あまりに似てるもんだから、いっぺんすーちゃんにご対面させてみたくて。 無理言って来てもらっちゃいました!」
さらに海音いわく、『海音』の名前を一発で読み当てたらしい。 それで海音はすっかり気をよくしてしまったようだ。
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