Utopia①

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Utopia①

 ――灰白色のパイプが張り巡らされた薄暗い部屋で、【No.47503】は目を覚ましました。  目の前には、いつも通り自分を見下ろす顔があります。【No.47503】は、その白衣の人間に語りかけました。 「……今回もあの人だったね。明日もまた来るのかなぁ」 「朝10時に心臓のご予約をされて帰りました」 「うげぇ。心臓か。初めてだから、少し怖いや」 「問題ございません。術後生存率は80%以上であると説明したはずです」 「それ、生きてるうちに返してもらったらの話でしょう?」 「その通りです」  【No.47503】は苦い顔をしました。  白衣の人間は45°の礼をして、そんな彼を置いて出て行ってしまいました。足音が甲高く部屋中に響きます。 「技術はあるのだし、もう少しきれいな見た目にするべきではないかなぁ」  7日ぶりに自分のもとへと帰ってきた右腕の繋ぎ目を見て【No.47503】は呟きました。  そして、【No.47503】は1枚の布からできた衣服を身にまといました。  Aluminiumを中心とした合金で作られているベッドをおりて、部屋に張り巡らされたパイプの上を少し駆けます。  両足が久しぶりに揃ったのが19日前。簡単にバランスを崩してしまいます。  常に最良の状態にしておかなければ注意を受けてしまいますから、【No.47503】は当初の予定よりも長く走り続けて筋力トレーニングとしました。  この建物を構成する合金は、かつて「最高の硬度を誇る」と謳われたダイヤモンドと同等の強度を持ちますから、しばらく走っていると【No.47503】の足の裏が内出血を起こしました。  【No.47503】は床に戻り、足の裏に内出血の回復を早める薬を注射しました。ついさっき眠っている間に右腕の付け根に打たれたものと同じです。  こうして何度も解体された体は丁寧に一つの個体としてまとめられて、人々に満足に貸し出しできるようになるのです。
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