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「わぁ、人間の食べ物がたくさん売ってるねー!」
「スーパーはそういう場所だからな。走り回るなよ?」
「あいっ! しょれ、なーに?」
「カートだよ。これにカゴを乗せて運ぶんだ」
「僕やりたい!」
「人にぶつけないようにできるか?」
「あいっ!」
カートに興味を示したのでカートを彼に動かしてもらう事にした。
子供用カートがある店で良かった。
「何にするか、夕飯……」
「おにいしゃんが元気になるご飯っ」
「肉って事か? そうだな、たまにはハンバーグにしてみるか。子供も好きなものだし」
普段ならカップ麺やコンビニ弁当で済ませるけど、子供がいるからにはそうも言ってられない。
「あと、子供用の食器も買わなきゃな。上のフロアの百円ショップで買うか」
「おにいしゃんっ! この木みたいな食べ物なぁに?」
「ブロッコリーってお野菜だよ」
「わぁ! これはー?」
「トマト」
「チューリップと同じ赤だねっ」
「そうだな」
スーパーで無邪気に喜ぶ彼を見ていると、心が落ち着く。
まさかこんな小さな子と突然一緒に暮らす事になるとは。
子供はあまり得意ではなかったはずなのに、この子には苦手意識がない。
自分に好意的な子が初めてだからだろうか。
スーパーで食材を一通り購入し、スーパー内にある百円ショップで子供に必要そうな物を一通り揃えた。
「いっぱいお買い物したね!」
「こんなに買ったのは久しぶりだ」
「お買い物楽しいね、おにいしゃん!」
「楽しい……か?」
「楽しいよ! おにいしゃんと一緒だもんっ」
ずっと一人だった俺の前に突然小さな小さな妖精は現れた。俺にとっては妖精というより天使なのかもしれない。
帰宅すると、俺は夕食の支度を始める。
「おにいしゃん何してるのー?」
「ご飯作ってるんだよ。こうやって肉をこねるんだ」
「僕もこねこねしたい!」
「え?」
「楽しそう!」
何に対しても好奇心旺盛なのが子供らしい。
とっくの昔に俺が無くした感情だ。
「こねこね、こねこねーっ!」
「まーるくこねるんだぞ?」
俺しかいない事で暗い雰囲気だった自宅は明るい雰囲気へと変わった。彼が現れてからは。
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