異常な私たちの日常

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異常な私たちの日常

「ごめん、別れてくれる?」 凍てつくような冷たい風が私の心を表すかのように頬をなでる。 「え?どうして……」 「だって葵浮気してるじゃん。いや、俺が浮気相手だったってことなのか?』 軽蔑したような冷たい目で私を睨み、弁明を一切聞こうともせずに私に背中を向けた彼氏。 いや……数秒前まで彼氏だった元彼氏。 私はどうやらまたしても振られたようだ。 大学の先輩の彼と今日は付き合って1カ月の記念日だった。そのお祝いか何かで朝から呼び出されたのかと思ったらこれだ。 遠ざかる元彼氏の背中を引き留めることなくぼーっと眺めながら息をつく。 べつに今回に始まったことじゃない、の事。 私は彼氏が出来ても大概1カ月持たずに振られる。 原因は90%あいつのせい。 なかば諦めみたいな所もあるし、結局私は元彼達にとってそれまでの存在だったって事だと思うから、遠ざかって行く元彼氏の背中を追いかけた事も引き留め弁明をしたことも今まで一度もない。 はぁ、とついた溜息が寒い冬空の下で白く形取った。 この痛いような寒さと同じで、私の心も震えそうだ。 私が彼氏に振られる理由は毎回だいたい同じ。 "浮気してるだろ。" "お前を信じられない。" "お前らはおかしい、異常だ。"って。 もちろん1回も浮気なんかした事実はない。 けど、私が誤解を与えてしまったのは事実だし、自分でも自覚はしてるからそんな彼らに言い返す言葉もなかった。 元彼氏達が言う通り私達はだと思う。 裏で何をしてるのか知らないけど、あいつの行動は私から見ても完全に異常だ。 でも、それに反抗もせずに許している私も相当世間の普通からは逸脱してると思う。 だって世間から見た異常が私達にとっては普通なのだから。
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