霊媒師 夕霧 弥生 第一章 椿

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仏壇の中や引き出しに、飲み物が流れ落ちた 慌てて仏壇の中の物を取り出し、布巾で拭いた 「もう〜最悪じゃん!」 時間をかけて丁寧に拭き、位牌を置き元に戻した 引き出しにもコーヒーが少し入ってしまった 引き出しを抜き取り、中の物を全部出し 丁寧に拭き、戻そうとしたその時だった 何かコトンと音がした 引き出しの底が、二重になっているのに気づいた 中板を取り出すと、A4サイズの物が丁寧に 布に包まれていた 布を開くと、封筒と小さな御守りが出て来た 御守りは紫色で、金糸で真ん中に炎の刺繍が 織られている、かなり古そうだ 「えっ何これ? こんな所に誰が入れたんだろう」 御守りの中には指輪が入っていた 炎の刻印が彫ってある 封筒の中には、墨で達筆に書かれた手紙と 巻き物が出て来た 「この手紙は、お婆ちゃんの字だ 何で隠す様に、こんな底に入れてあるの? それに何の巻き物?」 《 美鈴、この手紙を見つけたのね やはりお前が選ばれた 美鈴のママの千鶴子は選ばれ無かった 先祖代々この指輪を受け継げる者しか 見つけられない特別な指輪なの その血筋を引く美鈴は、霊媒師の力を持って 産まれたの 美鈴の右腕の内側に炎の様な、小さなアザがある でしょ? 霊媒師を受け継ぐ者だけにあるの 人探しや、この世に居ない人を救う事が出来るの 指輪が美鈴を選んだのよ 指輪には不思議な力が有るの 右手の人差し指にはめてご覧なさい 意味が分かる筈よ 怖がらないで大丈夫 人を救えるのだから 必ず大勢の人々に感謝されるでしょう この指輪の事は、誰にも言ってはいけない もし話すと美鈴は災いの、元凶となってしまう 元には戻れず死しか無くなり、霊媒術師は 美鈴の代で途絶えてしまう 例え愛する人や夫、子供たちにも 絶対に言ってはいけない 指輪は美鈴を守ってくれるでしょう 腕に炎が浮き上がる時、美鈴は見えない物を 察知するでしょう 最初は夢を見ると思うけど、それは現実なの 既に見たかも知れないわね 相談相手には、本当の事を知らせ無いと駄目です どんなに辛い事でも 言わずにいれば悲しみが長引くだけで 解決にはならないの 私もそうして来たのよ 指輪が外せる時は死ぬ時 これからも代々続くでしょう 美鈴の子供か孫か誰かは、分からないけど 指輪は何故か女性だけを選ぶの 美鈴、後の事は任せましたよ 指輪は誰にも見えないけど 呉々も悟られない様にね 相談者の家で会う事、そこに必ず見つける物がある 相談者に、この家を絶対に知られてはいけない 警察の信用出来る人だけに霊媒師と名乗りなさい 警察はきっと相談して来るでしょう 名前を変え顔を隠し、霊媒師として生きなければならない定めなの 金銭関係や議員の者は無視する事 美鈴ならきっと沢山の人を救えるわ 美鈴を頼って来るでしょう 本当に苦しんでいる人だけを、救ってあげるのよ 指輪が選んでくれるわ 大変だと思うけど修業を積むのよ 修業は体験を積む事で、力が増していくものなの いずれ降霊術や、呪われた物や人を 除霊出来るようになるでしょう 美鈴は幼い頃から、私より特別な能力を持ってた 頑張るんですよ これを読んだら 手紙は燃やす事 受継ぐ者に美鈴が手紙を残すのよ 忘れないでね 私の可愛い美鈴へ 》 「お婆ちゃんがそんなに人や、この世に居ない人を 救ってたなんて気づかなかった 優しいお婆ちゃんが、霊媒師だったんだなんて 私にそんな能力があったっけ? 覚えてないな..... そして今度は、私がこの世に居ない人を救う? じゃあ、あの夢は始まりなの? 私が霊媒師ってマジ?」 庭に出て手紙を燃やした 「お婆ちゃんこれでいいんだね?」 煙が空に消えて行った
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