霊媒師 夕霧 弥生 第一章 椿

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そこに母親が白いハンカチに包みネックレスを 持って来た 夫の姿を見て駆け寄った 「あなた分かってくれたのね、ありがとう 椿の為なのよ、ほら立ってパパ 先生コレを」 ネックレスを受け取り、桐の箱に入れた 「今から浄化しますが、この部屋を出てください 危険な状況になる恐れがありますので」 「どうか、よろしくお願いします先生」 両親は部屋を出た 私は大きく深呼吸し、祈祷すら知らない筈だが 言霊となり手をかざし大声で唱えた 「我は炎を司る者なり、怨念浄化浄霊を行う 我に力を与えたまえ」 リンが眩い光を放ち、部屋が一瞬見えない程の 強烈な光を放った すると、炎の刻印から炎が大きく長く伸び 炎の剣が現われた 私のアザが深紅に浮き出たその瞬間 メラメラと炎に包まれた(つるぎ)を 握り締めていた 「漆黒の闇の呪いし者よ、聞くが良い この極炎斬剣の前に姿を現し平伏せよ」 ネックレスの箱が、ガタガタ揺れ唸り声が聞こえる 【ウウ〜ウウ〜】 「抗う事は出来ぬ!姿を現せ!」 ネックレスから黒煙を出し姿を現した その姿は、おぞましい姿だった 体中に、もがき苦しみに歪んだ顔が見える 【何故だ、その(つるぎ)は既に無い筈だ 何故お前が持っているウウ〜】 「我は、炎の剣を受け継ぎし者 怨念と化した者達を解き離せ!」 【ウウ〜解き離すと思うのか!愚か者め】 「ならば切る!地獄に戻れ!」 剣を振り上げた 【ウウ〜殺られてなるものか!】 おぞましい姿をした悪霊が、私に襲いかかって来た 部屋の中の物が飛び交う、私は突き飛ばされたが 炎が私の体を包み込み守ってくれた 「このままでは切れない! 体中の霊魂達も傷付けてしまう」 その姿は色々と変身する 変身する時一瞬取り込まれた顔が、ひと塊になる事に気づいた 長い腕を何本も伸ばし、怒り狂って何度も 襲い掛かって来る 長い時間戦いが続いた 「今だ!」 私は悪霊の腕を数本切りつけ、炎の剣は胸を めがけ貫いた 「獄炎斬剣、覚悟!」 【ギヤア〜】 悪霊はバタリと倒れ込んだ 「さあ、直ぐに解放せよ!」 【わ、分かった解き離す もう許してくれ頼む、ウウ〜苦しい 我が下僕達よ、今ここに解放する 何処にでも行くがよい ウウ〜ウウ〜】 「呪われし者達よ、行くべき場所に戻るが良い 怨念を捨て直ぐに立ち去れ」 一斉に霊魂が飛び出し散って行った 「呪いし者よ、最後に腕の悪霊印を炎の剣で消す 二度と現世に戻れぬ様に封印する!」 【な、なんと!やめろ!】 「悪霊退散、覚悟せよ!」 【己〜よくも!グワアアアア〜】 呪いの悪霊印を焼き消した おぞましい姿は、叫びながら消えて行った すると炎の剣も、刻印の中にスっと消えた 私は肩で息をする程疲れきっていた 「ハア〜ハア〜 ......終わった....」 力が抜け座り込んだ 汗が首筋に流れ、長い髪が首筋に張り付く程だった 「私にこんな力があったなんて、信じられない 呪文なんか知らないのに、自然に出来た リンどうして? あっそうか! お婆ちゃんが特別な力があるって言ってたのは これの事なんだね リン、初仕事は大成功だね」 リンは無視した 「えっ嘘、終わったじゃん! えっ?あなた誰?」 箱を見ている女性が立っていた 「もしかして、節子さん?」 《ごめんなさい 私が悪霊を呼んでしまったんですね 沢山の人を死なせてしまった..... このネックレスは家が火事になり、唯一残った 母様(かあ様)の形見です 私の誕生日に母様から頂いたものです 家族は皆亡くなり、私だけが生き残りました 土地を伯父に奪われ、お金もなくなり働いた事が 無い私は、必死で働きました 生活するのは、本当に苦しかった それでも形見だけは売らなかった なのに伯父が私を殺し、焼かれて山に捨てられた 伯父は形見を売ってしまい、それを何処までも 追いかけて来ました 伯父が憎かった、恨みました 沢山の人がネックレスを付けるのを見て辛かった 私がみんなを殺してしまったんです 本当にごめんなさい》 「節子さん....さぞかし辛かったでしょう でも、あなたが殺した訳では無いのよ 悪霊が殺したのよ、節子さんも犠牲者なのよ 悪霊はもう居ないわ、安心してね このネックレスは大切な形見でしょう 節子さんの物よ、お返します 燃やさないと持てないのよね、待ってね」 「リン、炎の剣お願い、いでよ炎の剣」 リンが小さく光って剣を出した 「炎の剣よ叶えたまえ、この形見の品を持ち主に 与えよ」 炎の剣を箱に触れると、ボッと燃え消えた 炎の剣はスっと戻った 「リンありがとう」 《私のネックレス!あぁ母様やっと会えた 持っていてもいいのですね?》 「そうよ、節子さんのネックレスだもの これからはずっとお母様と一緒よ 行くべき場所は分かるわね?」 《はい、本当にありがとうございました 御恩は一生忘れません 夕霧弥生さんありがとう》 節子はネックレスを、大事そうに抱きしめながら 静かに消えて行った 「私の名前を知ってたんだ、良かったねリン」 リンはピカピカと光った
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