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ある栽培員の日誌
東暦2×××年
土は、我々にとって、最も基本的な天然資源である。
それがここ数百年、重金属や鉱物油、有機溶剤、農薬等によって汚染され続け、もはや手の施しようがなくなっていた。
土壌から汚染物質を削減、分解、除去する実績のある植物として、以前から「ヤナギ」に注目が集まっていたが、近年、汚染問題解決に絶大な効果を誇る植物が発見された。
母なる大柳。
遠く海を隔てたA国の、未開の土地に生息していたという。
大柳は希望の光だ。
生態は特殊で、ヒトとしての遺伝子と、植物としての遺伝子を持つ(まさか、A国による禁忌の研究成果ではあるまいな……)
外国の神話に登場する、ドライアドと似た種族かと思ったが、全く別物のようである。
我々は、大柳の実から生まれる彼らを、特異人種〈プランツ〉と名付けた。
性格は温厚で無邪気、かつ人の言葉を信じやすい。
我々は特異人種たちを保護した。
祖国であるN国へ、挿し木を持ち帰り、巨大な温室をつくって栽培を試みた。
結果、今や、母なる大柳は、このN国の生命維持に欠かせないものとなっている。
そういえば先日、我々の仲間のひとりが、特異人種の少年を連れて来た。
少年の名前を永遠という。
温室から出て、外の世界を見たいというので、観察記録の提出を条件に、許可が出された。
少年が今後何をなすか、観察してみたいという探究心、また少なからず、特異人種たちを利用しているという、良心の呵責があったからだろう。
少年が1年後、荒れた土地で柳となるのか、はたまたヒトとして生きながらえるのか。興味深い研究材料である。
(狐面の変わり者の同僚が、それを逐一報告してくれるとは、とても思えないのだが……)
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