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 桜子ちゃんは交友関係が半端なく幅広いアクティブ肉食系Ω代表とも言える恋多きタレントで、付き合っただの結婚だのと賑やかな話題に事欠かない。 実際、かろうじて桜子ちゃんと同じ戸籍に入れてもらっている伊織は成人を数年後に迎える身でありながら数ヶ月前に二十回目の名字の変更を行ったばかりだ。 Ωの男性はΩやβの女性と違って発情期を挟めばすぐに婚姻できるのも理由とは思われるが勿論一般的な回数ではない。  そんないろんな意味で奔放な性格のΩである桜子ちゃんの恋のお相手はナントカ大賞受賞の役者になった人に売れっ子タレントになった人、話題の実業家になった人に大物政治家になった人と幅広い。あ、どっかの国の王様になったっていうのもいたと思う。 そう。みんな『なった』なんだ。 『私、アゲオメ持ちだからすぐにみんなお金持ちや有名人になっちゃって捨てられちゃうのよね〜』とはテレビのトークショーでの桜子ちゃん談。 確かに伊織から見ても桜子ちゃんは運命の番でもない番の運を上げるΩ、だと思う。 ちなみに略して『アゲオメ』とは桜子ちゃん命名だ。 ニュース画面上は12回目となっている桜子ちゃんの男性遍歴。実際はテレビやマスコミが追えているのはごくごく一部。公表できる配偶者と元配偶者だけだなって伊織だって十歳になる頃には悟れるくらいには威力満点の面々だった。  髭面の冴えない役者が今やダンディズムの極みと言われる大御所。借金取りに怯えていた飲食店経営者が大規模ホテルグループの敏腕トップなんて桜子ちゃんの周りでは当たり前過ぎて普通過ぎる。  しかも桜子ちゃん自身だって演技をすれば、バスタオル必須レベルの運命に翻弄される儚く可憐な死期間近のΩから、ご家庭の血圧急上昇レベルの周りを根こそぎかきまわす壮絶腹黒悪役の魔性Ωまで演じちゃう。しかもサイドビジネスの方も達者で、ファッションに飲食店にサービス業とお店を開けば、皆様の痒い所に手が届く品質やサービスの良さであっという間に全国展開レベルになるという文句なしの凄腕。 多分収入的にはもうサイドじゃないと思う。 ……だけど桜子ちゃんの凄腕は世間が噂する『運を上げるΩ』とかそんな生易しいもんじゃない。  桜子ちゃんはすんげー努力してる。 人一倍努力して、人一倍人との縁を大切にして『運』と呼ばれるそれをもぎ取って自分のものにしている。 にも関わらず桜子ちゃんはいつも『私、アゲオメ持ってるから』って他力本願みたいに笑ってる。
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