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 今日は一日中、風が強かった。 とっくに桜の時期は終わって今は藤の花の時期だというのに例年よりも温暖差が激しいそうで雨や風が冷たく肌寒い日と日差しに溶けそうな日が交互に続く。バイト先で北部の山間部ではまだ雪も残っていると聞いて思わず先日仕舞い込んだ春物のコートをもう一度だすべきかと悩みつつ、いやいや季節を考えればもう暑くなるのみだと思い直し、今まさに家に帰ってきたところ。伊織以外は誰も居ない部屋は日が少し伸びたとはいえ、すでに真っ暗な時間帯だ。 「……ん?」  誰も居ない真っ暗だった部屋を一瞬にしてふわんと明るく照らしたのは帰ってすぐにテーブルの上に置いたスマホ。 ニュースサイトの通知画面の光が夜に馴染んた伊織の目には少し眩かった。 けれど、なんとなしに覗き込んだそのサムネの中に見知った笑顔を見つけた伊織はスマホを片手に持ち上げて、誰も居ない部屋で思わず独り言を口にした。 「……桜子ちゃん、ただいま」
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