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「ふあー、よく寝た」
さて、何時だ?
「うん、10時か」
今日は大学の入学式だ。
うん、間に合わないな。
入学式は午前10時からだしな。
大学の入学式に遅刻したら、何らかのペナルティとかあるのか?
東洋体育大学
私が入学する大学だ。私は教師になるために入学する。
私は東京オリンピックの空手女子銀メダリストだが、スポーツ推薦で入ったわけではない。
空手はやめたし。
どうせなら金メダリストになってからやめたかったが、世界一のコルチョフさんがいるから無理だ。コルチョフさんも私と同じ18歳だから、コルチョフさんが引退するのを待っても無駄なのだ。
まあ、コルチョフさんが引退してから私が金メダリストになっても意味ないけど。
さて、一応、大学に遅刻の電話をしておこう。
『はい、東洋体育大学事務局の中田です』
「あ、今日はすみません」
『え?』
「入学式に遅刻します」
『あの、お名前は』
「あ、斉藤銀花です」
『斉藤、ぎんかさんですね』
「はい」
『今は自宅とかですか?』
「はい」
『式には途中からですと入れませんよ』
「なるほど」
『入学後の予定表とかお渡しする物があるので、事務局へ来てください』
「はい」
『焦らなくて良いので、お気をつけて』
「ありがとうございます」
怒られなかった。優しい人だ。
さて、朝食にするかな。
私は朝もガッツリと食べるのだ。
野菜サラダはコンビニで買ってあるから、即席スープを作って肉を焼いた。
私は肉が大好きだ。
ガッツリと食べてから、私はマンションの部屋から出た。
マンション入口の管理人室の前を通る。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
「お気をつけて」
「あの」
「はい」
「田中さんは」
「田中は夜勤明けで、もう帰りましたけど、用事ですか?」
「あ、いえ、あの、田中さんって、武道の達人ですか?」
「え?」
「あ、ひょっとしたら、凄く強いのかと思って」
「田中が?」
「はい」
「いや、まさか」
「え?」
「田中は子供の頃から知ってますけど、運動とかまったく駄目ですよ」
「そうなんですか?」
「幼なじみの私が保証します」
「はあ」
いや、そんな保証はいらんけど。
「あ、でも」
「え?」
「オリンピック銀メダリストの斉藤さんがそう思うなら、田中には秘めた力が眠ってる?」
「まあ……その可能性もある、かも」
いや、無いだろ。まったく感じて無かったし。
やはり、昨日の事は夢だったのか?
「なるほど」
「あ、これから大学なんです」
「あ、行ってらっしゃい」
「はい」
私はマンションを出て駅へ向かう。
私が住んでいるマンションから大学まで、電車で10分くらいだ。
ちょっとした都会の郊外に東洋体育大学はある。
東洋で1番のスポーツ施設を売りにしている大学なのだ。
大学へ到着すると、入学式は終わっていた。
まあ、ゆっくりと朝食を準備して、よく噛んで食べたしな。
私は大学事務局へと。
「そこを何とか、お願いします」
事務局では知らない男が土下座していた。
何だ? 何をお願いしてるんだ?
美人の事務員さんに交際を申し込んでいるのか?
「鈴木さん、土下座はやめてください」
「では、待ってくれます?」
「今日の3時までに入金がないと、残念ですが」
「頑張りましたが無理なんです」
「そう言われても、規則なので」
「そこを何とか」
入金? 金の問題か?
私は自分の手続きをすることにしたが、そっちも気になる。
私の対応をしてくれている事務員さんに質問した。
「あの、あそこの土下座男は何ですか?」
「えっと……個人情報なので」
「じゃあ、聞いてみます」
「え?」
義を見てせざるは勇無きなり、だ。
それに、鈴木? なんとなく気になる。
これはイベントなのか?
「金がどうかしたのか?」
私は鈴木?とやらに質問した。
「え?」
「今日の3時までとか、何の事だ」
「君は」
「斉藤だ」
「銀メダリストの」
「そう」
「あ、サインください」
「いいけど、金の話を聞いてからな」
「斉藤さん、金持ちだよね」
「ん? まあ、親は」
「お金を貸してほしい」
「君の名は」
「あ、鈴木です」
「フルネーム」
「鈴木海」
やはりか。これはイベントなのか。
「君の名は、すずきかいだな」
「うん」
「いくら欲しい」
「貸してくれるの?」
「額による」
「100万円」
「何の金だ」
「前期の学費」
なるほど。
「よし、銀行へ行くぞ」
「貸してくれるの?」
「宇宙が滅ぶと私も困るからな」
「え?」
「行くぞ」
「あ、うん」
土下座をしていたすずきかいは立ち上がった。
うおっ、こいつデカいな。
身長185センチの私よりデカい。190センチはあるな、こいつ。
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