512人が本棚に入れています
本棚に追加
広海くんはポケットから鍵を取り出して、私の手に握らせる。
鍵?
私が持っているマンションの鍵とよく似た鍵だけど……渡された意味が分からず、手の中にある鍵と広海くんを交互に見た。
「うちで待っていてくれない?」
「いいけど。あ、ご飯用意しておこうか?」
「うん、助かる。よろしく」
私の返事が余程嬉しかったのか、広海くんは満面の笑みを浮かべた。喜んでくれるのが嬉しくて、私まで笑顔になる。
1日の疲れを感じてきていたけど、そんなのは吹き飛んだし、何よりも帰宅後の楽しみが出来たのが嬉しい。私も今夜は広海くんと一緒にいたいと思っていたから、同じ気持ちだったのが嬉しかった。
電車の窓からぼんやり街の灯りを眺めながら、家にある食材を思い浮かべる。それで広海くんのために何が作れるかと思案。
野菜はキャベツ、玉ねぎ、ピーマン、小松菜……肉は豚肉とひき肉があったかな。
スマホに目を向けると湊人からメッセージが届いていた。炒飯を作ったという連絡だった。バイト休みの湊人が作ったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!