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「ただいまー。炒飯をどのくらいある?」
「帰るなり唐突だね。どのくらいって、紗世ちゃんひとり分だよ?」
湊人は何で当たり前のことを聞いてくるんだ?と不思議そうに言う。普通に考えれば、私の分があれば良い。
でも、今日は広海くんの分もあればなお良い。
湊人はもう食べ終えていて、テーブルの上には私の分しか置かれていない。
私は、ポンと手を叩いた。
「分けよう!」
「分ける? 何を言ってるのさ。いったい誰と分けるというの?」
湊人が訝しげに見る。
誰とって、そんなの決まっているじゃないのよ。最近広海くんと仲良くしているのを知っているのだから、分かっているだろうにわざわざ聞くなんて、ちょっと意地悪だ。
「広海くんとだよ」
「へー。本当に仲良しだね。そろそろちゃんと付き合えばいいのに」
「実は付き合うことになった」
「ふうん。え、ええっ! 付き合うことになった? それって、つまり彼氏彼女の関係ってことだよね?」
そんなにも驚くほど信じられないことなのか、「本当に?」と念押しで聞いてくる。
私はうんうんとご機嫌に頷いて、肉と野菜を冷蔵庫から出してエコバッグに入れた。
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