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「それは、それはおめでとう。で、今夜は帰らない?」
「え? ううん、もちろん帰るつもりよ」
「いいよ、帰らなくて。それよりも頑張ってきて」
何を頑張れというのだか。
料理?
それとも女としての魅力を出す?
私は広海くんの部屋の前まで来て、ブンブンと首を横に振った。湊人が変なことを言うから、変なことを考えてしまったじゃないのよ……。
それよりもまずはご飯。
気持ちを切り替えて預かってきた鍵を使って開錠しようとしたが、いざ開けるとなると勝手に上がり込んでいいのだろうかと心配になってきた。
緊張で体が進まない。
何を躊躇っているだ、早く入って調理しないと広海くんが帰ってきてしまう。
自分で自分を奮い立たせ、中に入った。『紗世専用』と広海くんが新しく用意してくれた赤いスリッパを履いて、家から持ってきて赤いエプロンを身につける。
結局簡単ではあるけど、肉入りの野菜炒めを作った。それとマカロニサラダと玉子スープ。
広海くんから帰ると連絡が来てから、30分後。インターホンが鳴った。浮かれた足取りで玄関を開けた。
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