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直海くんはおばさんが頷いたのを確認してから、茶色の紙袋から水色の箱を取り出した。蓋を開けるとそこにはたくさんの手紙が入っていた。
「俺も昨日の夜、たまたま書いているのを見て、初めて知ったんだけどね。母さんは毎年誕生日前日の夜に広海を祝う手紙を書いていたんだよ」
「なんで? 俺のことなんて嫌いになったから捨てたんでしょ? それなのになんでお祝いなんて……」
広海くんは毎年書いていたことが信じられなく、切ない表情でおばさんに問う。広海くんはずっと捨てられたと思っていた……。
テーブルに視線を落としていたおばさんは顔を上げて「違う」とハッキリ言った。
「違うの。でも、私は広海にひどいことを言ってしまったから、会う資格なんてないと思っていて……会いたいと思っても会えなかった」
「会いたいと思った? 本当に?」
「そうよ。何で広海も引き取らなかったんだろうと何度も後悔したし、広海のことを思い出さない日は一日もなかった。だから、渡せなくても毎年お誕生日おめでとうと手紙を書いていたの」
「本当に? 俺のことなんて忘れていると思っていた。思い出したくもない存在なんだと思っていた。違うの?」
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