514人が本棚に入れています
本棚に追加
また「違う」と首を横に振るおばさんの目には涙が浮かんでいた。おばさんの言っていることは、嘘ではないと思う。
だけど、長い間嫌われた、捨てられたと思い込んでいた広海くんが信じるのは難しいことだ。
おばさんは訴えるよう話す。
「あの時は自分の気持ちを優先して広海を思いやることが出来なく、傷付けてしまってごめんなさい。広海を置いて出た日の夜、広海がいないことがとても寂しくて数日後、やっぱり引き取りたいとお父さんに申し出たの。だけど、広海は自分だけが置いて行かれたことにずっと泣いていて、お父さんは僕を捨てないでねと強く抱きついてきたから俺は広海を離さない、責任持って育てると言われた。だから、お父さんにお願いするしかなかった」
「そうだったんだ……」
おばさんの目から涙がこぼれ落ちた。広海くんも泣きそうで、苦しそうな表情になっていふ。
私はテーブルの下で広海くんの手をそっと握った。
大丈夫、今からでも遅くない。あの日まで愛し合っていた親子なんだから、また親子に戻れる。きっと、また笑いあえる。
最初のコメントを投稿しよう!