5.独身4日目

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 翌日11時ごろ。お昼前にキッチンカーを訪れた。「ひーくん」と声を掛けると、比佐はわずかに驚いた顔をした。しかし私の姿に気がつくと、すぐに顔をほころばせた。  ――よかった、忘れられてなかった。  ほっと心をなでおろした。 「えっちゃん。元気?」 「元気だよ。年相応にガタは来ているけどね」  比佐を見上げて苦笑する。今日も真っ黒な長袖シャツに白いエプロン姿だ。秋で肌寒いとはいえ、揚げ物用ガスフライヤーの前で暑くはないのだろうか。  比佐のつけているヘアバンドに、大手食品メーカーのロゴが入っているのを見つけ、だいぶ長くキッチンカーを運営しているのかなと考えた。 「そういえば断ったんだって?」 「なんの?」  とぼけた顔で比佐は「え?」と聞き返す。 「私の働いてる、ニッポン食油のコンベンション。実演企画を断ったって聞いたよ。遠慮なんかしなくていいのに。うちの部下たちにもトンダ食堂のキッチンカーは凄く人気があるんだよ。自信持って。何か不安な点でもあった?」 「あー……」  比佐はバツの悪そうな顔で、低い声を漏らしながら、一歩後ずさった。
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