609人が本棚に入れています
本棚に追加
いやいや絶対、ご意見じゃないでしょ。早足、ほぼかけ足で焦りながら公園を後にした。エントランスのエレベーターがちょうど一階についていて、それに飛び乗った。
ご意見なるメール等々は、頻繁に届くのだが第八会議室を用いるような案件は、入社してから自身に降りかかったことはない。他の部署……それこそ、研究部門の人がたまに出入りしているのは耳にしたことがあるが、噂にすぎない。
一人しか乗っていないエレベーターは、すぐに最上階に到着した。チンとレトロな到着音を鳴らし、横に揺れて箱が止まる。
扉が開くと社長秘書が焦った顔で待ち受けていた。
「おっ……とっと」
秘書にぶつかりそうになる。「どうも」と汗をぬぐいながら会釈をする。
「小路部門長。誰にも言って来てませんよね」
「さっきはちょうど外に出てたから」
なら大丈夫です、と頷いて秘書は会議室の重い扉を開いた。
プリントアウトされた紙面を見て、思わずマジか、と声が出た。
「社長のもとにこのメールが届いたのは」
「今朝だ」
最初のコメントを投稿しよう!