5.独身4日目

5/7
前へ
/98ページ
次へ
 いやいや絶対、ご意見じゃないでしょ。早足、ほぼかけ足で焦りながら公園を後にした。エントランスのエレベーターがちょうど一階についていて、それに飛び乗った。 ご意見なるメール等々は、頻繁に届くのだが第八会議室を用いるような案件は、入社してから自身に降りかかったことはない。他の部署……それこそ、研究部門の人がたまに出入りしているのは耳にしたことがあるが、噂にすぎない。 一人しか乗っていないエレベーターは、すぐに最上階に到着した。チンとレトロな到着音を鳴らし、横に揺れて箱が止まる。  扉が開くと社長秘書が焦った顔で待ち受けていた。 「おっ……とっと」  秘書にぶつかりそうになる。「どうも」と汗をぬぐいながら会釈をする。 「小路部門長。誰にも言って来てませんよね」 「さっきはちょうど外に出てたから」  なら大丈夫です、と頷いて秘書は会議室の重い扉を開いた。 プリントアウトされた紙面を見て、思わずマジか、と声が出た。 「社長のもとにこのメールが届いたのは」 「今朝だ」
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

609人が本棚に入れています
本棚に追加