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始業前の7時45分。もちろん送信元はフリーアドレスで名乗りは無かった。内容が内容だから、その程度の隠蔽は当たり前なのだろうか。
脅迫メールを目にした私は思っていたよりも冷静でいられた。
「……その、ここに書かれているように、展示会に関して贈収賄があったのは事実なのでしょうか。私は認知していなかったのですが」
「この賄賂に関する脅迫内容は、内部調査をさせている。おそらく……弊社にとって致命的なものではない」
自分の預かり知らぬところで山吹色のお菓子が行き来していたなんて、ただのとばっちりじゃないか。
独り身一発目の案件でやっちまいましたな。たまらず深いため息をついた。
どいつがやっちまったのか。そもそも公にできないことをするんじゃないよ、とひとりごつ。
一般的に贈収賄がバレるのは、食品納入で便宜を図っていたけれど、納入先が寝返った……などだ。そういうことに走ってしまう気持ちに、思い当たる節はある。激務の割には寂しい給料。その割に名前だけは業界でいっちょ前に知られているから、適当なこともできない。
えー、ならあのホテル相手にか? 面倒くさい事になりそうだ。
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