6.独身8日目 ☆

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 残業を終え、わたしは会社の外に出た。誰もいないと思っていたのに、突如行く手を阻まれる。恐る恐る顔を上げると、見知った顔が立っていた。 「……何でこんなところに?」 「えっちゃん」  さめざめと降る雨の中で比佐が佇んでいた。LEDの街灯が、雨粒の軌跡をまっすぐに照らしている。  雨に濡れた比佐は、ひどく寒々しく見えた。 「夜中に……もう八時、に。何で私の会社に」 「ちょっと用事があって」  どこに? 明かりの落ちた会社前で、用事なんかあるわけない比佐が雨を一身に受けている。 「ニッポン食油に連絡したいことがあって、その、しづらいんだったら、私のところに直接連絡くれてもよかったのに。そうすれば、コンベンションのことも上手く伝え――」 「……違うから」  ムッとした声で私の言葉を遮った。雨はバラバラと音を立て、次第に強くなってきた。手に握る傘が、大粒の雨に揺れる。 「…………そう、か」  ここにいた理由に納得はいかないけれど、私は雨に濡れた比佐に傘を差し出した。比佐をこのままにしてはおけない。同じ傘の下に入ると、肩がぶつかった。触れた肩口から、ふわりと花の匂いがした。
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