2.独身1日目

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2.独身1日目

 木の葉が橙に染まりきるまで、あと少しだ。  おおッ、寒い。 吹いた風の冷たさに、ぶるりと肩を震わせてスーツ姿の私は財布片手にエントランスを出た。  ニッポン食油に新卒で入社して、もう十七年。つまりこの秋も、十七回繰り返しているはずなのに、妙に寒々しいのは、離婚した心の傷のせいだろう。 熟年離婚、夫婦別姓、そんなことは自分たちには無関係だと思っていたら、あっさり妻に別れを告げられた。 ベータの妻とオメガの私。子どもを授かることはなかったが、穏やかな協力的生活を送れていた、はずだった。 ――まさか、おっさんになって守るものが無くなるとは思いもしなかった。  メタセコイアの並木に停められたキッチンカーに目を走らす。シダやモミのような細い葉が集まって、シャワシャワと音をたてていた。  てっぺんが見えないほど高い木々の梢は、秋になると赤茶色に紅葉し、そして小さな硬い松ぼっくりのような実をたくさん地に落とす。  このオフィス街に入る企業の社員たちの多くは、公園に集まるキッチンカーに昼食を求めて並ぶ。
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