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ひーくんこと、富田比佐とは実家がお隣さんで、年はちょうど十歳差。実の兄弟よりも仲良く、時に喧嘩をして育った。
惜しいことに十七年ぶりの邂逅は、ひとことふたこと言葉を交わすだけとなった。
積もる話に花を咲かせるには久しぶりすぎて、抱き合って涙するには十七年という期間は短すぎた。
比佐から買ったとんかつ弁当を手に、公園のベンチに座る。できるものなら、比佐と水入らずで話したいところだが、向こうは仕事中。ちらりと姿を見るにとどめた。あたたかい弁当を膝に置き、小さな声で「いただきます」と言い、箸を割る。
太陽が出てきて、きつね色のとんかつがキラキラ光って見えた。添えられたソースはどうしようか。このパック入りからしは付けようか。
うきうきしながら迷い、からしだけとんかつに付けた。
ごまのかかった白米はつややかだ。あつあつのとんかつを無言で噛みしめながら、ぼんやりと比佐の姿を思い浮かべる。
ずいぶん大きくなって、シュッとしたもんだ。
最後に比佐の姿を見たのは、実家を出るとき、つまり比佐が中学校に上がった頃だった。
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